マーケティングで売上を伸ばしていくには、LTVを用いて、目標CPAを設定することが非常に重要です。ECの数値を参考にして、計算方法から実践例まで解説します。
マーケティング施策に重要な2つの指標
まずはLTVとCPAの指標の意味、特徴を正しく理解しましょう。
LTVとは?
LTVは「Life Time Value)」の頭文字をとった略語です。日本語では「顧客生涯価値」と呼ばれます。1人の顧客から得られる一定期間内の売上(利益)の合計を意味します。
顧客「生涯」価値と呼ばれていますが、実際には「生涯」ではなく、目標とする利益回収期間を鑑みて、6カ月~2年程度の期間で区切り計算することが多いです。
また、売上とするのか、利益とするのか、明確な定義は決まっておらず、企業によって計算方法は少しずつ異なります。
代表的な計算式をご紹介します。
・売上の場合
LTV = 平均購入単価 × (一定期間における)平均購入回数
・利益の場合
LTV = 平均購入単価 × (一定期間における)平均購入回数 × 利益率
例えば、平均購入単価が4,500円、一度購入いただけると平均して1年で6回購入いただける化粧品の場合、売上ベースの年間LTVは、27,000円(4,500円 x 6)です。利益率が70%とすると、利益ベースの年間LTVは18,900円(27,000円 x 70%)です。
CPAとは?
CPAは「Cost Per Acquisition」または「Cost Per Action」の頭文字をとった略語です。日本語では「顧客獲得単価」と呼ばれます。主に広告効果を測定する指標で、1件の成果(注文や問い合わせ、資料請求など)を獲得するために費やした費用(広告費など)を意味します。
計算式は以下の通りです。
CPA=費用(広告費など) ÷ 獲得した成果件数
例えば、12,000円の広告費をかけて、6名のお客様に販売できた場合、CPAは2,000円(12,000円 ÷ 6)となります。
利益ベースのLTVより、CPAを引くと、最終的に残る利益を計算することができます。
適切な上限CPAとは?
CPAは低ければ低いほど、効率的に成果を獲得できていると言えます。しかし、成果の総数を増やし、売上を拡大していくにはCPAを抑えるだけではなく、効率的に運用を行いながらも一定の上昇、高いCPAは許容しなければいけません。
とはいえ、事業として営んでいる以上、赤字になることは許されません。上限CPAとは、1件の成果を獲得するために、かけることができる上限の費用を意味します。赤字にはならないギリギリの金額と考えて良いでしょう。
上限CPAはどのように計算するのが適切なのでしょうか?よくある過ちが「LTVを加味せず、1回の購入で赤字にならない金額」を上限としてしまうことです。
例えば下記のような化粧品の場合、
平均購入単価 6,000円
利益率 70%
——————————————
→利益額 4,200円
この場合、上限CPAを4,200円とすることは誤りです。確かに、CPAを4,200円以下に抑えることができれば利益は残ります。しかし、実際にはより大きく売上・利益を伸ばすチャンスを逃してしまっていると言えるのです。
LTVを加味した上限CPAとは?
LTVを加味することで、上限CPAをより高く設定することが可能です。例えば先ほど紹介した化粧品の、年間平均購入回数が6回とした場合、
平均購入単価 6,000円
平均購入回数 6回
利益率 70%
——————————————
→利益ベースの年間LTV 25,200円
年間の利益額は先程の6倍、25,200円にも達します。つまり、上限CPAも25,200円となります。1回の購入単価6,000円を大きく上回るCPAですので、1回目の購入時だけを見ると、赤字になってしまいます。しかし中・長期的に回収が出来るという仕組みです。
上限CPAが高くなることのメリット
上限CPAをより高く設定できることでこのようなメリットが生まれます。
1.出稿可能な広告メニューが増える
2.新規ユーザーの獲得を促進できる
上限CPAを高くする際に気をつけるべきこと
1点注意点があります。LTVは正確に計算することは難しいです。同じ商品でも購入者の属性(性別や年代)や購入経路などのセグメントによって数値が異なることが多いです。
例えば、全体で計算すると、LTVは28,000円だが、SEO経由で流入してきた顧客の場合には30,000円、広告経由の場合には25,000円しかないといったことがありえます。この場合、広告経由でCPA27,000円で獲得した顧客は、2,000円の赤字になってしまいます。
このような事態を起こさないためには、LTVを正確に分析できるCRMツールの導入などを検討しましょう。
LTVを高くするには?
LTVを高くすることができれば、上限CPAも高くすることができますので、販促の手法が広がり、新規顧客の獲得を行いやすくなります。LTVを構成する2つの指標「平均購入単価」と「平均購入回数」はいかに伸ばしていけば良いのでしょうか?
詳しくはこちらの記事「LTV(ライフタイムバリュー)が向上する6つの施策|計算方法やCRMツールの導入まで解説」で解説しています。ぜひご覧ください。
LTVを加味した上限CPAをより正確に、さらに成果を出すためには?
ここまで紹介してきた基礎知識に加えて、さらに成果を出すための考え方を紹介します。
1. LTVは定期的に計算して常に最新の数値を把握する
同一の商品であってもLTVは常に変動しています。例えば、単品リピート通販の場合には、カスタマーサポートの取り組みにより解約率が下がり購入回数が増えることもあるでしょう。月に1回は数値を計算して、マーケティングに反映していきましょう。
2. セグメント毎にLTVを把握して、最適化された施策を行う
同一の商品であっても、購入者、購入方法などのセグメントにより、LTVは大きく異なります。例えば、セール時のキャンペーンに惹かれてお試し感覚で商品を手に取った顧客と、通常価格で購入した顧客では、平均購入回数はきっと異なってくるでしょ。
そもそも、どこまでセグメントを細かく分けてLTVを計測できるのか?その仕組が整っているのかに大きく影響しますが、可能な限りセグメント毎に把握することを推奨します。ネットショップ事業者はこちらのCRMツールを利用することで重要なセグメント分けが可能となります。
3. 黒字化のタイミングを計画に織り込む
LTVを加味して上限CPAを設定した場合、CPAが平均購入単価を超えることは珍しくなく、獲得後の数ヶ月は赤字となります。何ヶ月後に黒字化する想定なのか、それまでの資金は問題はないのか、しっかりと計画に織り込んで下さい。
まとめ
LTVを加味した上限CPAを計算して、売上・利益の拡大を目指しましょう。土台となる数値、計算式、考え方をまずはしっかりと理解して下さい。EC事業者様の場合、必要なCRMツールはLTV-toolをご利用下さい。